平成22年度は平成21年度に開始した代表者・連携研究者の分担課題についての研究を発展・継続するとともに、研究全体としての情報交換会を開催して議論を深めた。主な(成果として、(1)ロスコーン分布をもつ衝撃波被反射電子によるホイスラー波励起過程について、線型・準線型・非線形段階の発展を明らかにし、それにより衝撃波統計加速過程の全体としての効率を定量的に見積もった。(2)陽子により励起された大振幅アルフェン波の非線形カスケード過程を考察し、電子成分の散乱への寄与を定量的に見積もった。(3)拡散近似では記述しきれない波動粒子相互作用(super-diffusive相互作用、sub-diffusive作用)について考察し、それらが粒子加速過程に及ぼす効果を見積もった。(4)相対論的衝撃波下流側での相対論的プラズマ乱流モデルを定量的に考察し、2次統計加速過程の効率を見積もった。 以上(1)-(4)の項目は年度当初から計画していたものであるが、本年度の新しい展開として、(5)最近見出されたTeV領域における宇宙線電子・陽子比異常の起源の考察を行い、その有力な候補天体であるマグネター・電波パルサーにおける電子加速の研究を開始した。(6)直接探査可能な新しい粒子加速領域として月・太陽風相互作用の結果生成される定在衝撃波について、「かぐや」のデータを用いた定量的研究を行った。 更に、宇宙線研究所客員教授として滞在した独・M.ショーラー教授、米・M.リー教授の協力を得て、衝撃波加速過程に関する研究現状の包括的レビューを企画・実行し、本研究の連携研究者との研究情報の交換を行った。
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