輻射補正に基づくニュートリノ質量生成模型の構成と、それらの模型におけるニュートリノのフレーバー構造と右巻きニュートリノ暗黒物質の性質の間の関連を中心に研究を進め、以下の成果を得た。 1.ニュートリノ振動実験から得られたニュートリノ質量と混合に対する制限をうまく説明するニュートリノ湯川結合のフレーバー構造を提案し、そのもとで暗黒物質の候補となる安定な右巻きニュートリノの残留量とレプトンフレーバーを破る過程を評価することで模型の整合性を示した。 2.超対称E6模型から導出される新しいタイプの拡張されたMSSMを提案した。クォーク・レプトンが世代により、27次元表現に異なる形で埋め込まれるこの模型においては、MSSMにおけるμ問題が解決されると同時に、ニュートリノ質量が通常のシーソー機構と幅射シーソー機構の2つによって生成されることを示した。模型の持つ現象論的特徴についても検討を加えた。 3.宇宙線中で発見された陽電子束の異常の起源について、1.で発見したニュートリノ振動の説明から支持されるフレーバー構造に基づき、右巻きニュートリノ暗黒物質の崩壊と対消滅からの説明を検討した。崩壊においては、不安定だが宇宙年齢よりも長い寿命を持つ暗黒物質を含めて2つの暗黒物質候補を持つ超対称模型での量子異常に起因する相互作用により、その説明が可能性となること指摘した。対消滅においては、対消滅断面積がBreit-Wigner共鳴を持つよう模型を拡張することで、暗黒物質の残留量と矛盾することなく宇宙線の異常が説明されうることを示した。
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