非線形摂動論にバイアスを、これまでで最も一般的な形で取り入れる方法論を確立した。一般に非局所バイアスを仮定した摂動論的方法を発展させた。特に、バイアスは単なる直線的な摂動展開がうまく働かない場合があることを指摘し、これを正しく扱うにはバイアスの繰り込みを行うことが必要であることを示した。さらに、バイアスのみならず、初期非ガウス性、赤方偏移空間変形の効果も組み込んだ、これまでで最も一般的な摂動論の定式化を与えることができた。任意の次数のスペクトル(パワースペクトル、バイスペクトル、トライスペクトル、などなど)を直線的に計算できる図形的手法を開発した。この図形的方法はバイアスの繰り込みのみならず、力学進化に関する図形的頂点の繰り込みにも威力を発揮し、これまでに得られている力学進化の再和の手法について、見通しのよい理解を与えるとともに、具体的な繰り込み頂点の式を一般的に導いた。この研究は将来的な応用性が非常に高く、今後の研究の礎となる重要な成果である。 ラグランジュ的見方に基づく摂動論について、これまでに行った1ループ近似を2ループ近似にまで精度を上げた計算を行った。まず、実空間と赤方偏移空間についてのパワースペクトルを理論的に導いた。そして実空間についてはさらにそれを数値シミュレーションのデータと比較した。シミュレーションと比較することにより、具体的にどの波長、どの赤方偏移まで信頼できるかがわかる。1ループ近似に比べて、2ループ近似は特に高赤方偏移での信頼性が飛躍的に高まることが示された。さらに、ハローバイアスを取り入れた摂動論について、数値シミュレーションから作ったハローカタログの解析と詳細に比較した。とくにバリオン音響振動スケールの振る舞いについて調べ、超波長モードにおいては非線形性の効果を解析式がよく説明できることを定量的に示した。これにより、上記の一般的なバイアスを含めて一般化した非線形摂動論の定式化は、数値シミュレーションで得られる非線形効果やハローバイアスの効果とよく一致する有用なものであることが確かめられた。
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