研究概要 |
本研究は、弦理論の非摂動論的定式化の一つである「弦の場の理論(=String Field Theory=SFT)」に関わる本質的/原理的な諸問題・課題を包括的に研究し、SFTがこれからの弦理論の新しい物理を切り開く突破口を与えることを目指すものである。平成23年度に引き続き、平成24年度も Witten により提唱された開弦の場の理論である Cubic String Field Theory(=CSFT)の位相的構造の解明に向けた研究を行い、重要な成果を得た。すなわち、i) CSFTは3次元の場の理論である Chern-Simons理論(=CS理論)と代数的にほぼ同一の構造をしていることと、ii) CS理論において形式的にゼロの有限ゲージ変換として与えられる古典解に対してその作用が3次元空間からゲージ群への「巻きつき数(winding number)」という位相的量で与えられることに注目し、CSFTにおいても古典解の作用が(ある量を単位として)整数に値を取る「巻きつき数」という解釈が可能な位相的量として与えられるか、という問題に取り組んだ。 特に平成24年度は、古典解が表現される(K,B,c)-代数に内在する非常に美しい数学的構造を発見し、それを利用して新たな古典解の構成を行った。すなわち、従来の古典解はK=0における解の特異性から巻きつき数が発生していたのであるが、我々は、K=∞における特異性を巻きつき数の起源とする解を構成した。この構成において重要な点は、(K,B,c)-代数やその積分がKを1/Kに置き換える一種の双対変換の下で不変であるという発見である。これらの研究の成果は、大学院生の小路田俊子氏との共著論文として発表し、専門雑誌に掲載された。
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