研究概要 |
ユカワオン模型では,クォークとレプトンの質量スペクトルの起源は,3×3行列表現で表せるスカラー粒子Y_f(ユカワオン)の真空期待値<Y_f>によって,有効湯川結合定数がY^<eff>_f=<Y_f>/Λ(Λは有効理論のエネルギースケール)として与えられることによると考える.すなわち,湯川結合定数は,物理基礎法則における「定数」ではなく,原理的には力学計算が可能の量として位置付けられる.前年度には,ニュートリノ質量行列とアップクォークの質量行列とのある現象論的関係を先験的に仮定して,観測されたニュートリノ混合の行列の説明を試みたが,本年度は,S_3対称性を満たすクォークの質量行列をユカワオンの立場から求め,それによって,前年度のような先験的仮定を使わないで,ニュートリノ混合の理論の構築に成功した.このモデルでは,2つのパラメター値を与えることにより,観測されている2つのアップクォーク質量比と3つのニュートリノ混合パラメター値の同時説明が可能となる.(ハンブルクでの国際会議Lepton-Photon 2009で報告.Phys.Lett.誌に掲載.)さらに,荷電レプトンの質量スペクトルについても,ユカワオン模型の立場から,あらたな関係が議論された[Phys.Lett.誌(2009)].これらの研究成果を通して,ユカワオンの真空期待値を求めるための超対称性真空条件を用いる定式化は,ほぼ定着したと言ってよい.
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