原子核を構成するにあたり、パイ中間子の役割は決定的に重要である。軽い核においては核力全体の80%くらいの引力をもたらす。その中でもテンソル力の役割は重要で約50%くらいの引力を与える。ところがこれまでは、このテンソル力の取り扱い法が確立されておらず、G行列の方法で議論されて来た。今年度はこのテンソル力の取り扱い法の開発を行った。 TOSM法テンサー最適化シェルモデルは通常のシェルモデルに加えて2p-2h状態を変分関数に加え、さらに2p状態の波動関数の広がりのパラメータを導入することでテンサーカの役割を最大限に引き出す。この方法の良さを示すためにHe4で核力を直接使った計算を行い、少数多体理論の計算結果との比較を行った。90%くらいの良さでこれまでの計算結果を再現することを示した。 RCMF法相対論的カイラル平均場近似モデルはカイラル対称性を持ったラグランジャンを使って原子核を変分法で決定する方法である。単純な相対論的平均場近似ではパイ中間子の効果は取り込めない。そこで、2p-2h状態まで変分空間を拡張して平均場法の方法で基底状態の決定を行う。この方法ではG行列を自動的に含んでいることを示すことが出来る。最初にHe4にこの方法を適応した。さらにはC12と016の計算も行った。パイ中間子がC12の方に大きく働き、マジック数の出現に大きな影響を与えることを示すことができた。 これらの研究には加速器の開発が不可欠である。加速器に必要な強力な電源のノイズを激減する方法の提案を行った。さらに、その理論的背景の論文を発表した。
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