原子核におけるパイ中間子の役割を定量的に調べた。重い原子核で使う理論として拡張されたBHF理論を構築し、軽い核で使う理論としてTOFM法を構築した。 拡張されたブリュックナーハートレーフォック(BHF)理論の構築 パイ中間子は強いテンソルカを引き起こす。その取り扱いはハートレーフォック(HF)理論の枠内に入らないので、テンソルカを取り扱うことができる空間として平均場理論的には2p-2hの状態を変分関数に入れた定式化を行った。変分原理によって作られた基底状態の粒子波動関数を決める方程式としてBHF理論の方程式と似たものが得られた。この方程式には強い2体の相関が考慮されており、この理論は相関の強い系での基礎方程式として使われることになるであろう。 テンソル最適化少数系理論による軽いs-シェル核の計算 テンソル最適化シェルモデルはシェルモデルの枠組みでテンソルカを取り扱うモデルである。その要点を考慮し、少数多体系で使う理論体系を構築した。それをテンソル最適化少数系理論(TOFM)と名づける。少数系である重水素、トリトン、アルファの計算を行った。TOFM近似での計算結果はほぼ厳密計算の結果を再現する。原子核における重水素相関の重要性を示すことができた。
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