原子核物理においてパイ中間子は重要な働きをしている。しかしその取扱い法が確立されてはおらず、核力を直接使った重い核の記述は出来ないでいた。今回の科研費研究でその方法を確立出来た。 1。テンサー最適化シェルモデル(TOSM)の基本原理では、テンソル力を取り扱うにはシェルモデル的な基底状態をベースにして、それと直接テンサー力で繋がる状態を変分空間に導入した変分関数で多体系を記述するということである。この近似がどれくらい良いのかということを少数多体系の方法で確かめた。変分的には満足出来る基底エネルギーを得ることができる。テンソル相関に関してはほぼ90%取り込めることを定量的に証明した。 2。TOSMの基本原理をハートレーフォック(HF)法に適用した。その結果得られた運動方程式はブリュックナーハートレーフォッック(BHF)理論を内包するものであることが判明した。その定式化を拡張されたBHF理論(EBHF)とし論文として発表した。テンソル力をあつかうには十分な2p2h状態を導入する必要がある。そのことにより運動量の大きな成分を基底状態は含むことになる。現在はEBHF理論を使って有限核の計算を行うためのプログラムを開発中である。 3。EBHF理論はBHF理論を内包している。そこで、EBHF理論において2p2h間の相互作用として2粒子間のものだけに限るとするとBHF理論の方程式を得ることができる。さらには変分法に基づいているので、波動関数に高い運動量成分を含むことが可能になる。その考えを無限核物質に応用した。最初にBHF理論の状態方程式はほぼ再現することを示した上で、高い運動量成分の計算を行った。中性子星のニュートリノ冷却においてURCA過程が可能になることを示した。研究成果を論文として投稿した。
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