弦の場の理論の理論構造を古典解とゲージ対称性の観点から明らかにするという目的で、研究実施計画に沿ってクラスタ計算機を導入して弦の場の理論の数値解析を行い、以下の成果を得た。1. 弦の場の理論におけるidentity-based解のまわりでの理論の真空構造を数値的に解析し、その真空構造は「identity-based解~タキオン真空解」という予想と一致する構造をもつことが明らかになった。2. 弦の場の理論におけるidentity-based解のまわりでの理論のスペクトラムをレベル2において計算した結果、タキオンモードの質量の振舞いが「identity-based解~タキオン真空解」という予想と一致する振舞いを示すことが明らかになった。3. 弦の場の理論のポテンシャルに関するレベル24までの数値データを構成することができた。 Identity-based解は弦の場の理論のゲージ対称性と深く関係しているが、その関係を真空構造の観点から明らかにすることができた。これらの研究結果はこの古典解が物理的にタキオン真空解に対応することを示唆している。以前の計算では近似に用いる質量レベルが低いために真空エネルギーの振舞いが判然としない部分もあったが、本研究によって世界で最も高い質量レベルでの計算を実現したことには意義があり、identity-based解がタキオン真空解に対応することをより明確に示せたことは重要な結果である。
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