弦の場の理論の理論構造を古典解とゲージ対称性の観点から明らかにするという目的で、研究実施計画に沿ってクラスタ計算機を導入して弦の場の理論の数値解析を行い、以下の成果を得た。 1.弦の場の理論におけるidentity-based解のまわりでの理論の真空構造を数値的に解析し、その真空構造は「identity-based解~タキオン真空解」という予想と一致する構造をもつことが昨年度よりも高い精度で明らかになった。2.弦の場の理論におけるidentity-based解のまわりでの理論の量子論的な真空エネルギーをレベル20の精度で計算した結果、「identity-based解~タキオン真空解」という予想と一致する振舞いを示すことが明らかになった。3.弦の場の理論のポテンシャルに関するレベル26までの数値データを構成することができた。 Identity-based解は弦の場の理論のゲージ対称性と深く関係しているが、その関係を真空構造と真空エネルギーの観点から明らかにすることができた。この解自身の真空エネルギーは発散量であるために直接計算することができないが、これらの研究結果はこの古典解が物理的にはタキオン真空解に対応することを示唆しており、真空エネルギーの発散量から物理的に意味のある有限量を取り出すなんらかの総和法が存在することが期待される。この総和法を明らかにすることが、弦の場の理論の古典解研究にとって重要問題であることが再確認された。
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