SDSS銀河分布のデータを用いたパワースペクトル解析を進め、バリオン音響振動(BAO)の減衰から得られる宇宙論的制限を調べた。これまでの研究からBAOの減衰を測定することで、質量密度揺らぎの振幅に制限が得られる可能性が示唆されていた。今年度は、まず測定したパワースペクトルからBAOの信号を取り出す安定した方法を開発し、BAOの減衰を理論に基づいた表式と比較することで、質量密度揺らぎの振幅に対する制限を定量的に求めた。その結果、BAOの減衰が存在されることを確認するとともに、得られた質量密度揺らぎの振幅が宇宙項を導入したコールド・ダーク・マター・モデルの予言と良く合うことが分かった。また将来の大規模な赤方偏移サーベイによって得られる質量密度揺らぎの振幅を定量的に予言し、それが重力理論の制限にも有用であることも示した。成果はPhys. Rev. D誌に発表された。 また、f(R)拡張重力模型における宇宙論的密度揺らぎの進化を数値的及び解析的に調べ、スカラー・テンソル漸近領域での近似表式を見いだした。f(R)拡張重力模型ではコンプトン波長と呼ばれる量が理論を特徴づける量で、将来の弱重力レンズサーベイで期待されるコンプトン波長の制限を調べた。成果は、Phys. Rev. D誌に掲載された。また、このコンプトン波長パラメーターに対してSDSS銀河分布データの多重極スペクトルを測定して制限を与えた。この成果は現在投稿中である。 また、拡張重力模型として最近提案されたHorava-Lifshitz重力模型の性質を明らかにするため、この模型に特徴的な初期揺らぎのスペクトルをインフレーション理論に応用して調べた。成果は、Phys. Rev. D誌に掲載された。
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