研究課題/領域番号 |
21540270
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山本 一博 広島大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (50284154)
|
キーワード | ダークエネルギー / 重力理論 / 重力レンズ / 銀河団ハロー / 宇宙背景放射 / 銀河の大規模構造 |
研究概要 |
今年度は拡張重力模型の理論予言と宇宙論的観測との比較に関する3つの研究を行った。 第1に、共同研究者の木村氏とともに、拡張重力模型であるガリレオン模型の大規模構造を用いた検証を進めた。前年度からの継続した研究で、銀河分布の赤方偏移歪みを用いたテストが有効であることを示した。また宇宙背景放射の積分ザックス-ヴォルフェ効果と銀河の大規模構造とのクロス相関関数がガリレオン模型に与える制限を観測と理論を比較することにより定量的に明らかにした。この方法による制限がガリレオン模型に対して最も強い制限を与えること示した。また、将来の銀河サーベイで得られる制限についても調べた。 第2に、運動方程式が二階の微分方程式になるというガリレオン重力模型の特徴を最大限一般化した模型の非線形効果が重要となるヴァインシュタイン機構について調べた。このタイプも模型では、小スケールでスカラー場の非線形効果によりスカラー場の自由度が隠され、ニュートン重力が回復されることが一般に期待されていた。しかし、我々の解析の結果、最大限一般化されたガリレオン重力模型で、ヴァインシュタイ機構は働くが、必ずしもニュートン重力が回復するとは限らないことを示した。ニュートン重力が回復する場合としない場合を分類した。 第3に、共同研究者の成川氏とともに、ヴァインシュタイン機構が働く修正重力理論において球対称ハローの密度プロファイル模型の構築を行った。ガリレオン重力模型においてダークマターハローの中心では、ヴァインシュタイン機構によりニュートン重力が回復するが、その外縁部ではその回復が十分でなく、観測的テストの可能性を指摘した。さらに、一般化されたガリレオン模型において、このヴァインシュタイン機構の遷移に対して重力レンズを用いた観測から制限する方法を新たに開発した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的に対して、SDSS Data Release7のデータを用いたパワースペクトル解析の実行、赤方偏移歪みを正確に取り出すために必要なWindow効果の処理方法を開発ができた。また、f(R)修正重力模型、ガリレオン重力模型およびその一般化された模型の理論的解析も進めており、研究はおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画としては、これまでの研究を今後も推進するが、特に今後の方策として、計画している3つの項目を融合することで新しい成果に結びつけることを目標とする。一般化されたガリレオン重力模型の理論予言をこれまでとは異なるいくつかの視点から探究する。一つは、準非線形領域での密度揺らぎの進化を調べる。この成果を軸に、SDSS銀河分布との比較を行う。銀河団ハローが修正重力模型を検証する上で重要であることが分かったので、ヴァインシュタイン機構を伴う一般化されたガリレオン模型、およびカメレオン機構を伴うカメレオン重力模型の検証を行う。特に銀河団の質量とガスの分布がテストに有用であることが分かってきたので、重力レンズを用いた観測とX線観測を合わせた制限について検討する。
|