研究課題
1.原子炉ニュートリノのフラックスの理論値が最近見直され、従来よりも3%増加したものが正しいフラックスであるという主張が専門家の間で出されるようになり、質量二乗差が1eV^2程度のニュートリノ振動に関与するステライルニュートリノの存在の可能性(原子炉アノマリーと呼ばれている)が、再び脚光を浴びてきている。そこで、1eV^2程度の質量二乗差のステライルニュートリノのニュートリノ振動を探るための方法として、至近距離に測定器を置いた原子炉ニュートリノ振動実験の現象論を考察した。仮定としては、同一な前置検出器と後方検出器がそれぞれ一基で、Bugey実験と同じ体積・系統誤差をもつこと、前置検出器と後方検出器の炉心からの距離を自由に変えられるとしてこれらの距離について最適化すること、ステライルニュートリノは1種類で、いわゆる(3+1)-スキームを考えること、である。結果は、商業炉の場合、炉心の直径が3~4mあり、基線の平均化により2eV^2以上の質量二乗差に対して感度が劣化することがわかった。一方、炉心の大きさが比較的小さな実験原子炉(高速中性子炉の常陽、ILLの実験炉、Osirisの実験炉等)の場合には、数eV^2程度の質量二乗差に対してsin^22(混合角)が0.03程度まで達成できることがわかった。2.LSNDの実験結果や原子炉アノマリーから示唆される現象をニュートリノ振動で説明しようとする試みには、多くの場合、物質と一切相互作用のないステライルニュートリノが関与すると仮定されているが、その枠組みを少し広げ、新しい物理により物質とある程度相互作用する、準ステライルニュートリノの現象論を考察した。その結果は、物質とのポテンシャルが電子ニュートリノの標準的ポテンシャルよりも数倍程度以上に大きい場合には、太陽・大気ニュートリノからの制限により、LSNDの結果を説明することは出来ないことがわかった。
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