「非一様宇宙の大域的な進化と非一様性の関係」を明らかにするための研究計画のひとつとして、ブラックホール宇宙の理論的な解析を予定している。この計画をすすめる為に、近年、数値相対論の分野でブラックホールの数値解析のために採用されることの多いpuncture法を採用し、境界条件の研究を行った。この成果はまだ発表されていないが、副次的な成果として得られた「高次元時空におけるpuncture法と座標条件の関係」を発表した(論文2)。また、非一様な宇宙の特殊な例として、自己相似的な円筒対称宇宙の解析を行い、これまで球対称宇宙モデルにおいて確認されていた自己相似仮説(宇宙の構造は最終的に自己相似的に進化するという仮説)が、円筒対称宇宙においても成り立つことを強く示唆する結果を得た。また、円筒対称時空を特徴づける量として半世紀近くもの間、有用と考えられてさたC-エネルギーと呼ばれる準局所的エネルギーが、全く役に立たない場合があることを明らかにした(論文1)。 ダークエネルギー問題として注目されている宇宙論的な観測結果は、ダークエネルギーではなく宇宙の非一様性に起因している可能性がある。本研究課題のひとつは、ダークエネルギー問題が我々の宇宙の非一様性に起因するものなのかどうか存明らかにする方法を考案することであるが、既に明らかにされている方法のひとつは、注目する天体が放出する光が受ける宇宙論的な赤方偏移の時間変化を観測することである。この観測により、塵状物質に満たされた非一様宇宙モデルの正否を確認することができると考えられている。インドのタタ基礎研究所のグループとの共同研究で、質量がゼロのスカラー場に満たされた宇宙の場合、この方法では判別できない可能性があることを明らかにした(論文3)。また、塵状物質に満たされた非一様宇宙モデルに対して宇宙背景輻射の観測データからどのよりな制限がつくのかを研究し、現在の観測では制限が付けられないことを明らかにした。この成果に関しては、現在、論文を執筆中である。
|