超新星爆発シミュレーションへの適用を目指した変分法による核物質状態方程式(EOS)構築に向け、以下の研究を行なった。 まず有限温度一様非対称核物質の自由エネルギーを変分法により求めた。ここで用いる変分法は、有限温度の一様な中性子物質および対称核物質に対して用いられたSchmidt-Pandharipandeの方法の拡張であり、任意の陽子混在度xに対する、陽子と中性子の平均占有確率(実際にはその関数形に含まれる単一粒子エネルギースペクトルを特徴付ける有効質量)について、自由エネルギーを最小化する方法である。 これまでのテスト計算で得られたように、自由エネルギーの陽子混在度x依存性が、xの2次関数的振舞いからずれる傾向が、今回の系統的計算で確認された。その原因はエントロピーのx依存性にあると考えられる。さらに内部エネルギーやエントロピーも系統的に計算し、本変分法の解が自己無矛盾であることが確認された。 また自由エネルギーより圧力を求め、臨界温度Tcのx依存性を調べたところ、対称核物質の場合にTc=18MeVであったが、xの減少とともにTcも減少し、およそx=0.08でTc=0MeVとなることが分かった。ただし最終的なTcの決定には、後述のような非一様核物質に対するThomas-Fermi(TF)計算が必要となる。 非一様核物質に対しては、これまでの研究成果である中性子星クラスト(絶対零度β安定な非一様物質)における原子核のTF計算を拡張し、任意のxに対するエネルギー計算により、一様相と非一様相の境界を定めるテスト計算を行なった。その結果、本研究によるEOSの場合、ShenらのEOSに比べてわずかに高密度側で非一様相から一様相へ転移することがわかった。
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