現実的核力から出発して超新星爆発計算に適用可能な核物質状態方程式を作成する研究を進めた。 今年度は昨年度までで確立した有限温度非対称核物質に対するクラスター変分法(Schmidt-Pandharipande(SP)の方法)による自由エネルギーの数値計算コードの改良を行った。改良の目的は、超新星爆発計算用の数値データとして耐えうる計算精度を保証することである。超新星爆発計算用の数値データは、密度・温度・陽子混在度の細かいポイントに対して滑らかに変化する必要がある。また圧力やエントロピーなどの熱力学量を自由エネルギーデータの数値微分で求めることからも、この改良は不可欠である。 また、SPの方法の妥当性を検証するために、自由エネルギーのfull minimization(FM)の研究を行った。SPの方法では核物質内部エネルギーを求める際に、有限温度のJastrow波動関数によるHamiltonian期待値を計算するが、ここでJastrow波動関数に含まれる2核子間相関関数は、密度と陽子混在度がその状態と等しい絶対零度の場合に変分計算で決定し、この相関関数は温度変化しないと仮定する。そして単一粒子状態の平均占有確率を支配する核子の有効質量について、自由エネルギーを最小化する。しかし本来は各温度状態において相関関数の自由度に関しても変分を行い、自由エネルギーを最小化しなければならない。そこで、自由エネルギーを相関関数と有効質量の両者について最小化するFMの計算を行い、従来のSPの方法との比較を行った。その結果、SPの方法による自由エネルギーはFMでの結果と非常に良く一致することが確認された。
|