研究課題
炭素12原子核のホイル状態は3つのα粒子がガス的に緩く結合し、しかもその最低エネルギー状態であるS軌道に3つのα粒子が凝縮した特異的な構造を有していることが明らかにされている。ホイル状態のように原子核を構成しているクラスターがガス的構造を有し、全てのクラスターがS軌道を占有している状態をホイル類似状態と呼ぶ。このガス的状態は原子核における新しい物質形態の一つであり、この状態の存在及び運動様式の拡がりと深さを探求することは、原子核構造論の重要な課題の一つである。今年度は酸素16原子核以外に、軽い非4n核の代表であるボロン11原子核と炭素13原子核に焦点を置いて研究を進めた。得られた成果は以下の通りである。(1)ボロン11原子核の3番目の3/2-状態がクラスター構造を有していることを明らかにし、さらにα+α+t閾値近傍の2番目の1/2+状態が、3つのクラスター(2個のα粒子、1個のトライトン粒子)が主としてS軌道を占有しているホイル類似的なガス構造を有する状態であることを明らかにした。この成果は原著論文として出版された。(2)炭素13原子核ではクラスター模型を用いて、3つの励起1/2-状態のモノポール遷移強度の再現に初めて成功し、このエネルギー領域におけるクラスター自由度の重要性を示した。また、1番目の1/2+状態が中性子ハロー的な状態を有する事を理論的に明らかにし、さらに3α+n閾値近傍の3番目の1/2+状態がホイル類似構造を有することを示した。(3)酸素16の原子核において、微視的波動関数(THSR波動関数)を用いて共鳴の条件を考慮に入れた構造分析を行い、4α閾値近傍の0^+状態がホイル類似状態であることを明らかにした。この成果は原著論文として発表された。
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