研究課題
軽い核の代表例である酸素16核のアイソスカラー型単極子励起関数において、相対論および非相対論に基づいた平均場理論では比較的高いエネルギー領域(約16MeVから40MeV)の強度関数のデータを近似的に再現するが、比較的低いエネルギー領域(約16MeV以下)における強度関数の再現は、定性的ですら大きな困難を伴うという事実がある。この低エネルギー領域の強度関数が4αの直交条件模型に基づいた4体計算により見事に再現されることを23年度の研究で明らかにした。この中で、アイソスカラー型単極子演算子は1粒子1空孔状態で特徴づけられる平均場的な状態だけではなく、クラスター構造を有する状態を励起し、酸素16核ではこれら2つの質的に異なる構造がエネルギー的に分離して励起されることを示した。さらに、酸素16核の基底状態は2重閉殻構造を有しているのにも係らず、この状態からクラスター状態が比較的強く励起される物理的機構が以下のように明らかにされた:(1)2重閉殻構造を持つ基底状態の波動関数はBayman-Bohr定理によりクラスター波動関数および4αクラスター波動波動関数と数学的に同等であることから、基底状態には平均場的な自由度以外に、α+^<12>Cや4αのクラスター自由度が内在していること、(2)アイソスカラー型の単極子演算子は核子座標に関して2次形式であるために、クラスター内核子に作用する項とクラスター間の相対部分に作用する項に分離することができ、後者は基底状態に内在するクラスター自由度を活性化して、クラスター状態を励起できること、(3)基底状態におけるαクラスター型の相関がモノポール励起強度をさらに大きくすること、である。このメカニズムは軽い核においては普遍的であると考えられるので、酸素16核以外の核(中性子過剰核も含めて)で系統的な分析を行うことの重要性を示すことができた。
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