高次元ゲージ理論は、標準理論を超える物理として大変有望なアイデアです。中でもゲージヒッグス統一機構は、ゲージ階層性問題に対して有望な解決策を与え、かつ、比較的軽いヒッグスを予言することから、現在進中のLHC実験とも関係して、特に、注目されています。 この機構は、有限なヒッグス質量を与えることが示唆されており、このことを理論的に、とりわけ、非摂動的に検証することは、この機構にとって本質的な問題です。格子化された場の量子理論は非摂動的な研究には欠かせない手法であることが知られています。我々は5次元のオービフォルド化されたSU(2)ゲージ理論を格子化して、理論の非摂動的な側面の研究を行いました。昨年度に発表された我々の論文で議論された「スティック対称性」を用いて、理論の相構造を明らかにする研究を進めました。部分的に得られた成果は共同研究者である研究分担者の宗博人(愛媛大学・理工学部)氏により、国際的に著名な会議(Lattice'10)で発表されました(2010年6月)。我々は、また、ゲージヒッグス統一機構のアイデアを大統一理論(GUT)の中で実現できる理論の構築を試みました。その際、弦理論でしばしば用いられる、「対角的埋め込み」の手法を用いて、最も簡単な模型を構築することに成功しました。これによって、GUTのゲージ対称性の破れのパターンを力学的に実現する模型を手に入れたことになります。この論文は、査読付き学術論文に投稿中です。得られた模型の現象論的な側面の研究、および、「対角的埋め込み」の手法を用いない模型構築の可能性を探る予定です。
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