研究課題/領域番号 |
21540290
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研究機関 | 岡山光量子科学研究所 |
研究代表者 |
杉野 文彦 岡山光量子科学研究所, その他部局等, 研究員 (60393419)
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研究分担者 |
二宮 正夫 岡山光量子科学研究所, その他部局等, その他 (40198536)
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キーワード | 素粒子理論 / 格子ゲージ理論 / 超対称性 / 行列模型 |
研究概要 |
本研究では、超対称ゲージ理論の非摂動的側面に関して、低エネルギー有効理論の枠を超えた新たな知見を得、理解を深めるための有効な方法として,格子理論に基づく非摂動的定式化を発展させることを行ってきた。 平成22年度に本研究代表者は花田政範氏、松浦壮氏と2次元 N=(8,8) 超対称ヤン・ミルス理論に質量項を導入した変形を考察し、2つの超対称性を保つ格子定式化を行った。それは2次元理論の非摂動的定式化にとどまらず、行列模型の手法を用いることにより、4次元 N=4 ヤン・ミルス理論が非摂動的に得られるものである。この構成法はパラメーターの微調整を必要とせず、更に一般的な理論のゲージ対称性に対して可能であると期待される。この構成法を摂動論的に検証するために、連携研究者の鈴木博氏に加わってもらい、スカラー場の量子効果を含めた有効作用の計算を行った。この内容は現在、論文執筆の準備段階にある。 2次元 N=(4,4) 超対称ヤン・ミルス理論にも同様の格子定式化を行い、そこから4次元N=2 ヤン・ミルス理論の構成を行い、論文にまとめた。この場合は4次元空間は非可換性を持つものになり、通常の可換な空間上の理論とは異なるものであるが、それ自身として興味深い理論であり、また将来に物質場を加えた理論に応用することで問題が解決する可能性がある。 また、この構成法を様々な理論に適用する基礎を確立するための研究を行った。超対称性を持つ理論では局所化やニコライ写像という技術がしばしば有効だが、超対称性が自発的に破れる場合にそれらの技術は依然として有効なのか?そうでないならば修正を加えることで有効性が回復されるのか?に関して調べ、黒木経秀氏と論文を執筆した。特にニコライ写像は超対称性を破る外場を導入した後も有効に働くことがわかった。これは超対称性を有する系を解析する上で重要な役割を果たすと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
4次元 N=4 超対称ヤン・ミルス理論の構成に関する検証の摂動計算を進めている途中で、同様の手法を2次元 N=(4,4) 超対称ヤン・ミルス理論に応用して4次元 N=2 超対称ヤン・ミルス理論の構成を行う課題が予期せず見つかった。 長大な計算を必要とする前者と比べ、計算が迅速に進む後者を先に論文にまとめる必要性が出てきた。従って、先に4次元 N=2 ヤン・ミルス理論の構成に関する論文を執筆し、その後摂動計算を再開することにした。 この事情により当初の摂動計算の進捗はやや遅れ、補助金を平成24年度に繰り越して研究を5ヶ月間延長することとした。繰越分の研究が終了した平成24年度8月末現在において、論文執筆の準備段階にある。
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今後の研究の推進方策 |
4次元 N=4 ヤン・ミルス理論の摂動的計算による検証の論文を執筆した後、物質場を含む2次元 N=(4,4) 超対称ゲージ理論の格子定式化を行い、その結果から物質場を含む4次元 N=2 超対称ゲージ理論の構成を試みる計画である。物質場を導入すると理論が共形不変になる場合があり、可換な通常の4次元空間上の理論が得られる可能性があるので、興味深いと思われる。 構成法の基礎となる行列模型の研究において、まずは典型的な模型である超対称二重井戸行列模型の臨界現象を調べ、対応する超弦理論について考察を行っていく予定である。その後、様々な超対称行列模型を調べ、理解を深めていくことで、高次元の超対称ゲージ理論の構成に有用な示唆が得られると期待している。
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