本研究では、新世代化合物半導体として各種デバイス応用が期待されているGaNおよびZnOを材料として、素粒子実験分野での実用を見据えた各種特性や放射線耐性に優れた次世代放射線検出器の開発を行っている。今年度はまずZnO基板による素子作製と性能評価を行った。ここでは、標準抵抗(~1000Ωcm)および高抵抗(>10^<10>Ωcm)の2種類の基板(膜厚~500μm)を用いて、検出器の基本素子となるショットキー型ダイオードを作製し、各種特性評価を行った。併せて、基板熱処理による特性の変化から、検出器としての最適な基板条件、プロセス条件の確立も図った。電流-電圧特性評価から求められた暗電流値は、標準抵抗基板で~100nA/cm^2、高抵抗基板で~10pA/cm^2程度と抑制され、耐圧が<-50Vであった。これらは当初の開発目標を満たすものである。一方で、紫外光に対する分光感度・光応答性では、良好な波長カットオフが観られたものの、光電流が数10mW/A以下という低い値であった。このことから、センサーとして充分な信号雑音比を達成するためには、基板条件の最適化を含め、継続した検討が必要である。また、作製したダイオード素子に、X線を照射したところ、感度を有することが確認された。これは、本研究で作製したZnO素子が、実用放射線センサーとして有望であることを示すきわめて重要な結果である。今後は、継続して、感度の定量的評価と性能向上に向けた方策を探っていく。 一方、厚膜GaN基板による素子作製についても進めた。そこでは、放射線検出器としての条件を考慮した上で選定した厚さ5μmのGaN基板に対して、反応性イオンエッチングなどを試しながら、素子作製プロセスの確立を図った。現在、熱処理や洗浄工程の条件を絞り込んでいる段階であり、今後それらプロセス条件の最適化を目指す。
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