研究概要 |
宇宙における元素合成は、ビッグバン元素合成、恒星内の燃焼、および、超新星内での爆発的な燃焼に大別される。初期宇宙のビッグバンから3分後の頃、ヘリウム4が生成され、また、これより重い原子核は、その後の恒星内の燃焼で生成されたと推定されている。特に、安定核から飛び離れた位置にあるトリウムやウラニウムの存在は、超新星内で爆発的に核燃焼が起きた事の証拠と考えられている。一方、人口衛星に搭載したガンマ検出器による観測において、半減期72万年のアルミニウム26(26Al)に由来する1.809MeVのガンマ線が観測された。これは、現在でも銀河内で元素合成が活発に行われており、宇宙空間に26Alが放出されている事を示唆する。ここで問題になるのは、26Alの生成量である。ネットワーク計算によれば60Feも同様に生成されると;期待されたが、実際の観測では、60Feは26A1に比べ数倍小さく、計算と観測値が食い違う事が判った。この原因のひとつとして、ネットワーク計算に用いた原子核反応の反応率のあいまいさがあげられる。そこで、我々は、この26Alの生成に非常に重要な、バイパス反応経路に位置する26Siに関して、原子核構造を詳細に観測する研究を行った。26Siを生成する原子核反応は25Al(p,gamma)26Si反応であるが、この反応の反応率は26Siの励起状態の陽子閾値のすぐ上の準位構造に大きく左右される。そこでこの26Siを24Mg(3He,n)26Si反応により実験室内生成し、元素合成に関与すると考えられる励起状態から放出されるガンマ線を観測した。高分解能ゲルマニウム検出器(検出効率140%)を用いてガンマ線同時計測実験を行った結果、励起エネルギー5.886MeVに新たな状態を見出した。この状態のスピン・パリティはガンマ線角度相関測定の結果から0+と推定された。この状態の発見により26Siの生成量が増大すると考えられる。すなわち26Alは減少すると推定される。
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