研究概要 |
本研究では、TeVを超える高エネルギー電子、ガンマ線、原子核宇宙線の高精度直接観測を目的とした全吸収型カロリメータのワイドレンジ信号読み出しシステム研究を行った。 本年度は、22年度までに開発した複数センサからなるフォトダイオードパッケージの評価と結果のとりまとめ、新たに開発したワイドレンジASIC,低ノイズハイブリッドICを用いたワイドレンジ読み出し回路の評価、とりまとめの2つを実施した。1)フォトダイオードパッケージについては、コバルト60照射施設において放射線耐性を詳しく調べた。国際宇宙ステーションでの5年以内の使用では暗電流増加、ゲイン変動等には問題ない事を確認した。更にタングステン酸鉛結晶シンチレータと一緒に用いた性能実証実験をCERN・SPSビームを用いて2010年度に引き続き本年度も実施し、宇宙線検出器としての性能を評価した。2010年度の結果は宇宙線国際会議、学術論文で発表した。2)昨年度製作した0.25μmCMOSプロセスによるASICについて、性能評価試験を実施し、予定通りの性能(測定レンジ1fC以下から20pC以上)を達成した。本ASICは4チャンネル分の電荷増幅器回路を実装しており、最終出力段にはウィルキンソン方式の電圧時間変換回路を搭載している。時間分解能5ns程度の時間デジタルコンバータ(TDC)により0.1fC以下での電荷測定が可能であるため、FPGAなどによるTDCを使用でき、多チェンネル読み出しシステムを容易に実現できる。これらの結果は国際会議、学術雑誌で発表した。3)ハイブリッドICについては、実際の宇宙線観測装置CALETに使用され、メーカーと共同で読み出しシステム開発が進められた。同性能の試作器を大学でも評価し、6桁以上のダイナミックレンジをもつことを確認した。
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