研究概要 |
今年度は中性子ハロー核のハロー・アナログ重陽子共鳴の測定計画を中心に進めた。本計画では^<11>Li(=^9Li+2n)のハロー2中性子のガモフ・テラー遷移によってできるハロー・アナログ状態^<11>Be^*(=^9Li+d)の探索を^9Li+d共鳴散乱により行う。^9Li+d共鳴状態の存在はまだよく分かっていないが、理論や^<11>Liβ崩壊のデータから^<11>Beの励起エネルギー18.2MeV付近に存在し、β崩壊における遅発n, d, t,α粒子放出に影響を与えていると考えられている。特にβ遅発重陽子放出確率は18.2MeV状態がハロー・アナログ状態であるかどうかに強く依存する。 最初に核子あたり0.85MeVの^9Liビームの生成テストを高エネルギー加速器研究機構・日本原子力研究開発機構のRIビーム施設TRIACで行った。その結果、最大6×104個/秒の本測定に十分な強度が得られた。次に^9Li+d散乱・反応の本測定を4日間行った。標的には2,3mg/cm^2の重水素化ポリエチレンを使用し、散乱・反応により発生するd, t,α粒子のスペクトルを半導体検出器で測定した。検出粒子のエネルギー範囲は0.4-1.4MeVと非常に低く、粒子識別を行うために標的直前に置いたビーム時間検出器と半導体検出器の間の飛行時間と半導体検出器のエネルギー情報を使用した。また、本測定に先立ち半導体検出器に最適化した時間フィルター増幅器を作成し、他の回路とあわせて測定回路系を構築した。その結果、粒子識別に必要な1nsec(FWHM)以下の時間分解能を達成した。今後、反応粒子エネルギースペクトルを解析し、R行列計算コードによる計算と比較して共鳴エネルギーと幅に関する情報を引き出して、ハロー・アナログ状態の可能性を議論する予定である。
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