研究概要 |
日本よりGSIに持ち込んだ実験装置は再び理研に持ち帰った後、理研に常設するビームコースを模索していたが、今年度やっと設置場所が決まった。次年度にレールを移動する台車上に常設してビームタイムの際に装置全体をビーム位置まで移動して測定することになる。 昨年度GSIで測定したニッケル70,68,66不安定核ビームによる陽子散乱の実験結果はデータ整理が概ね終了し、H24年春の物理学会で発表するに至った。本格的な不安定核ビームによる初めての中間エネルギー陽子散乱測定になる。 今年度はこのほかに不安定核である14Cの陽子弾性散乱実験で核内の中性子・陽子密度分布を測定するために放射性物質取り扱いの安全装置の準備を行った。具体的には磁気スペクトロメーターの焦点面の真空遮断膜が何らかの原因で破損した場合標的である放射性物質14Cフォイルを保護する為に緊急遮断バルブの選定と、購入、改良を行った。これにより膜破断後空気が標的に到達する時間が40msecであるが、その半分の20msec以内に遮断バルブが閉まり標的を保護できることになる。14C標的製作のためにフードの製作、油圧プレスの購入を行った。またコールドテストとして、粒子径の異なる12C粉末を購入しセルフサポート標的の製作テストをおこなった。その結果ターゲット厚10mg/cm2では殆ど100%の確率で標的フォイルを製作する技術を確立させた。 本研究の解析を進める過程で2つの異なる中間エネルギー陽子弾性散乱を測定することで、不安定核ビームでも中性子分布以外に陽子分布まで抽出できることに気付き、そのパイロット事業としてとしてジルコニウムアイソトープによる弾性散乱測定を新たに開始した。
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