タンデムバンデグラフ加速器、線形加速器、サイクロトロンおよびシンクロトロン加速器の加速効率を上げるための荷電変換用炭素薄膜の開発のための重イオンビーム・スパッタリング装置の開発を行って来た。 平成21年度は真空チェンバー、真空排気系、イオン源およびビーム加速・収束系の設計製作を行って来た。また平成22年度は、真空チェンバー内のビームストップ部およびターゲットホルダーをX-Yおよび回転させるための駆動メカの設計製作を行った。また高圧電源の配線およびガス流量計のコントロールユニットも完成させた。これらの仕事はこれまで東京工業大学原子炉工学研究所服部俊幸教授の研究室で行われて来た。しかし同教授の停年退官に伴い場所が確保できなくなったため、昨年度から東京大学原子核科学研究センター(CNS)で行っている。装置はCNSで完成させ、現在高エネルギーのネガティブ・プロトンおよび高エネルギー重イオン用の厚い炭素薄膜の開発を行っている。また、この装置を用いてベリリウムやシリコンなどの原子核ターゲットも製作し、理研AVFサイクロトロンの実験などへも提供する予定である。さらに国際共同研究として、米国のSANDIA国立研究所の重イオン加速器へもこの装置で製作したチャージストリッパー・フォイルを導入することになり、共同研究をすでに始めている。今夏には、米国Texas州FortWorthで行われるCAARI2012(22nd International Conference on the Application of Accelerator in Research and Industry)において招待講演を依頼されているので、今回の炭素膜の開発について講演を行う。 最後に、昨年度は東日本大震災の影響で国内シンポジウムや研究会などが取り止めになり、発表の機会がなくなってしまったが、今後は我々の炭素薄膜が世界最高性能であることを世界に示し、世界の高エネルギー加速器で採用してもらい成果を上げて行きたい。
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