研究概要 |
本研究の主な目的はCERNPSにおけるDIRAC実験を遂行する事によって,π^-とπ^+,或はπ^-とK+がクーロン力で束縛されたπ-π+原子およびK+π-原子の崩壊寿命を直接測定し,ππ, Kπ中間子のs波散乱長を求め,これをカイラル摂動理論で計算した散乱長と高い精度で比較することにより非摂動領域でのQCDの検証を行うこと,及びその発展としてπ-π+原子およびK+π-原子の励起状態のラムシフトを測定することである. 1998に新しいこの実験のためのビームラインが完成後徐々に装置を改良し,又プライマリビーム強度を上げながらデータの取得を行ってきた.そして各検出器のビーム強度耐性を増強し,またスペクトロメータにはアエロジェル,重ガスのチェレンコフカウンタを加えるとの改変を行って本計画においてはπK原子の崩壊寿命を測定するためのDIRAC延長実験のデータ取得を開始した. 日本グループとしてはより強い1次ビーム中で優れたトリガーを作るための新しい0.28mmファイバーを用いた10cmÅ~10cm, XY2面のホドスコープ(newSFD)を製作し,スペクトロメータに組み込んでF1TDC-TDC-ADC回路をもちいて読み出しを行うことによりビーム強度の向上と,得られたデータの精度の向上に寄与した. 昨年度は前年度に引き続きデータ取得と,主に上記のホドスコープの保守とそのモニタリングのためのプログラム開発,及びラムシフトの測定のための強磁場永久磁石の準備を進めた.またさらに大強度のビームに耐えられるようにdE/dxカウンターの改良のための予備実験を行い,そのデータを解析した.
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