動的自己核偏極(DYNASP : DYnamic NucleAr Self Polarization)と呼ばれる原子核の偏極法を確立し、これをβ-NMRに適用し、不安定核の核磁気モーメントを測定することを目的として、研究を開始した。本年度は、実験装置の整備を主に行った。実験装置は、核偏極を誘起するレーザー装置、試料を冷却するクライオスタット、β線検出器などで構成される。 レーザー装置に関しては、個体レーザーのオーバーホールを行い、5Wのレーザー出力が得られるようにした。これをポンプレーザーとして用い、Ti:サファイアレーザーから約600mWの赤外レーザーの出力を確認した。 クライオスタットに関しては、液体Heで4Kまで冷却し、装置の基本性能に問題のないことを確認した。 実験に用いるβ線検出器として、シンチレーター付き光電子増倍管、Si検出器、PINフォトダイオードを候補として取り上げ、これらの試験を行った。その結果、PINフォトダイオードが最も小型で、かつ低バックグラウンドであることがわかった。試験したPINフォトダイオードは直径約30mmのクライオスタット内に収納でき、従ってサンプルに十分近づけられるので、高効率、低バックグラウンドなβNMR実験が可能となると期待している。
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