動的自己核偏極(DYNASP:DYnamic NucleAr Self Polarization)と呼ばれる原子核の偏極法を確立し、これをβ-NMRに適用し、不安定核の核磁気モーメントを測定することを目的として、研究を開始した。 理論的な側面では、円偏光で励起された伝導電子がDYNASPに及ぼす影響についての考察を行なった。その結果、円偏向の向きで、原子核の偏極度を制御できることがわかった。また、臨界温度以下で円偏向の向きを掃引すると、核の偏極度がヒステリシス曲線を描くことが明らかになった。 実験では、昨年に引き続き、実験装置の整備を行った。実験装置は、核偏極を誘起するレーザー装置、試料を冷却するクライオスタット、β線検出器などで構成される。クライオスタットの液体Heをロータリーポンプで蒸発させ、試料を約2Kまで冷却できることを確認した。β線検出器はPINフォトダイオードを採用し、クライオスタットに取り付け、液体He温度以下で正常に動作することを確認した。日本原子力機構JRR3で、InP結晶を照射し、In不安定核試料を作成し、0.5MBq程度のβ線源ができることを確認した。
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