研究課題
X線・中性子線回折測定において生ずる散漫散乱強度の振動変化を解析することで、熱振動における原子間の相関効果が決定できる。この相関効果から原子間の力定数を、また力定数と結晶構造からフォノンの分散関係を導出できることを明らかにした。力定数よりシミュレーションで求めたKBrのフォノン分散関係は、中性子非弾性散乱より測定されていた結果と類似の形状となることが判明した。このように、粉末回折測定は、結晶構造の決定のみならず、音速や比熱などの物性値なども推測できることとなった。今年度は東日本大震災の影響でJ-PARCやJRR-3などの実験施設の稼動が停止したため新たな中性子回折実験は実施できなかったが、これまでJRR-3およびオーストラリア原子力研究所(ANSTO)などで得られたデータを解析し、イオン導電体Cu_2Seやイオン結晶Ag_2Oなどの散漫散乱強度について論文を発表した。イオン導電体では拡散イオンの無秩序分布と熱振動の相関効果を含む系における散漫散乱強度の説明を行った。室温以下の低温で負の膨張係数を示すAg_2Oの熱振動パラメータの値は10K程度の低温でも大きく、このためこれまで報告されていない散漫散乱の強度変化が低温においても観測された。一方、室温以上での格子定数の温度変化は大きく、熱解析(TMA、TG)で膨張率の異常な増加、試料の分解に伴う重量の減少などが観測された。また、ハンドプレスにより加圧した試料のX線回折パターンで、ブラッグラインの半値幅の圧力依存性を観測した。この原因が結晶の歪みに由来することで説明が可能であることを見出した。この圧力に依存する半値幅の増加は、Ag_2Oと同じ赤銅鉱型構造をもつCu_2Oにおいても生ずることを確認した。
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Solid State Ionics
巻: 192 ページ: 54-57
J.alloys and compounds
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doi:10.1016/j.jallcom.2011.02.101