分数量子ホール状態の電子スピンが関与する核スピン偏極や大きな抵抗増大、多数電子スピンが関わるスカーミオン励起などを詳細に調べることを目指して、本研究ではKerr効果を用いた2次元電子系の電子スピン偏極をできるだけ高感度に計測する手法を開発し、そのイメージングを行うことで、電子スピン偏極度の可視化を行った。これにより、量子ホール電子系のスピン偏極状態の空間分布、特にメゾスコピック~マクロスコピックなサイズを持つドメイン構造の直接観測を捉えることを目指して実験を行った。平成23年度は平成22年度に作製した、偏波保存型光ファイバーを用いたサニャック干渉計と数MHz程度の変調周波数によるロックイン検出を用いた高感度・高安定Kerr効果計測系を用いた量子ホール電子系のスピン・イメージング計測システムを製作し、弱励起光による整数および分数量子ホール状態でのスピン偏極度のイメージングを行った。システムの時間安定性を高めて測定イメージの再現性の向上させることに成功した。また、の依存性などを調べて、分数量子ホール状態での長時間巨大磁気抵抗の機構の解明やスピンの制御に関わる知見を得る。また、試料直上の光学系に高NAの非球面対物レンズを用いて小さな照射スポット径を実現するとともに、偏波保存シングルモード光ファイバーのコアをピンホールとして用いることで共焦点顕微鏡と同様な効果を持たせて、Kerr効果イメージングの空間分解能を1ミクロン程度まで向上させることに成功した。これを用いて量子ホール効果でのエッジ状態のスピン偏極の分布についても調べ、占有数1近傍での試料端の電子スピン偏極度について電流の有無による影響を詳しく調べた。さらに、分数量子ホール効果での計測を可能にするため、希釈冷凍機とKerr顕微鏡を組み合わせた計測系を製作した。
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