本研究で我々は、光学系と検出器を含めた測定系全部を、試料に対して装置の空間分解能程度の微少量、縦・横・斜め等にシフトすることで、シグナル強度の試料位置依存性のみを抽出するイメージング手法を提案している。昨年度は、イメージファイバ、ピエゾ駆動ステージ、CCDカメラを組み合わせたイメージング装置を作製し、結像面内で試料を移動させるためのプログラム制御、および画像演算プログラムの開発を行った。 最終年度に当たる本年度は、主に炭素の単原子層であるグラフェン試料を対象に、昨年度完成したイメージファイバを用いたイメージング装置での実験に加えて、市販の光学顕微鏡(オリンパスBX60)にピエゾ駆動ステージを結合させた測定システムの構築を行い、本手法の更なる有効性を検証した。イメージファイバを用いたイメージング装置では、本来ファイバのコア径で決まる空間分解能しかなく、さらに光が伝播しないクラッド部分により、ラプラシアンフィルタ等の画像の鮮鋭化処理は有効ではない。本手法の適用、すなわち元の位置での画像とシフト画像との差分積算により、微弱なグラフェン試料による反射信号の検出に成功し、大幅な分解能の向上を確認した。また、分解能のシフト量依存性を調べ、最適なシフト量の範囲を明らかにした。光学顕微鏡への適用においては、結像面内でグラフェン試料を顕微鏡の空間分解能程度シフトさせ、差分処理することにより、同様の分解能の向上を確認できた。これらの結果は数値演算による鮮鋭化処理とは決定的に異なっており、この手法が画像演算の過程で空間2次微分イメージを自動生成することに加え、基本的に差分法であることから分解能の向上に有効であることが結論づけられた。
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