研究課題
グラファイトから炭素1原子層を取り出したものが単層グラフェンである。無限に大きなグラフェンは2次元ギャップレス半導体であり、電子の運動はディラック粒子のようにふるまうことが知られている。実際の試料は大きさが有限なので、必ず端(エッジ)が存在する。エッジ近傍の電子はしばしば試料全体の物性を左右するほど重要な役割をする。理論計算によると、グラフェン2次元電子のエッジ状態は原子配列や化学修飾の違いによって多彩な表情を見せると言われている。グラフェン試料の形状を細長くすると、エッジ状態が支配的になり、バンドギャップが生じるなどナノグラフェン特有の物性が現れる。我々が化学的手法で作成したグラフェンナノリボン試料は、幅100nm、長さ30μm程度の単層グラフェンであり、原子スケールで端の構造が一様であることが走査型電子顕微鏡および原子間力顕微鏡による観察でわかっている。この試料の電気伝導度を測定するために、これら試料とのコンタクト電極作成を試みた。当初は微細加工プロセスの途中で試料が剥がれてしまう問題があったが、試料の貼り付け方法および電子ビーム描画後のリフトオフの仕方を工夫することでコンタクト電極を作成することに成功した。現在、幅や長さの異なる試料について電気伝導度測定が始まっている。低温・強磁場下での測定を行うことにより、グラフェンエッジ状態と試料サイズによる効果が電気伝導度とどのようにかかわっているかが明らかになると期待される。
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Physics E
巻: 42 ページ: 1046-1049