励起子分子は非線形光学応答において重要な役割を果たすが、電子と正孔の多体効果を平均場で扱う近似では励起子分子を記述することができない。そこで、励起子分子を簡単に扱うモデルとして、1次元フレンケル励起子が近接サイト間をホッピングし、2個の励起子が隣接するときに互いに引力相互作用を受けるという模型を取り上げた。この模型はフレンケル励起子やその2励起子状態を簡単に扱うモデルとして非線形光学応答の数値計算で広く利用されている。ただし、量子井戸に閉じ込められたフレンケル励起子・2励起子状態を考える場合、面内方向に十分の長さをとる必要があり、大規模な数値計算を用いてハミルトニアンを対角化する必要があった。 今年度はこの模型による2励起子状態のエネルギーと波動関数を対角化することなく短時間で数値計算する方法を開発した。従来の方法では励起子分子の束縛エネルギーなどの実験値と合うようなハミルトニアンのパラメータ(励起子間引力相互作用の強さなど)の値を求めるために、繰り返し大規模数値対角化を行う必要があったが、開発した手法では、試行計算をすることなく実験値に合うパラメータを決定することができる。また、対角化を行う場合と比較して、数値計算に必要なメモリは非常に少ない。共振器-量子井戸系の非線形光学応答を計算する場合、共振器モードの光子状態も考慮するために計算に必要な自由度がさらに増加するので、この手法はさらに有効であると考えられる。
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