1 励起子分子は非線形光学応答において重要な役割を果たすが、電子と正孔の多体効果を平均場で扱う近似では励起子分子を記述することができない。そこで、フレンケル励起子の場合ぐ励起子が近接サイト間のみホッピングし、2個の励起子が隣接するときに互いに引力相互作用を受ける、という模型がよく用いられる。これまで、この模型(主に1次元)を用いて励起子分子状態や非線形光学応答が数値的に調べられてきたが、十分大きなサイズが必要な場合は大規模な数値対角化を行う必要があった。昨年度は、この模型について1次元系に限ってではあるが、2励起子状態のエネルギーと波動関数を数値対角化に頼らないで高速に計算する方法を開発した。この方法はメモリの使用を大幅に減少させることができる。今年度は、この方法を2次元と3次元の場合に拡張することに成功した。共振器-量子井戸系の非線形光学応答を計算する場合、共振器モードの光子状態も考慮するために計算に必 要な自由度がさらに増加する。しかし、この方法を利用すれば、メモリ数と時間を大幅に節約した数値解析が可能となる。 2 共振器-量子井戸系からのスクイージング光の生成を共振器QEDに基づいて理論的に調べた。量子井戸の膜厚を制御することにより、励起子分子とポラリトンの結合状態を実現することができるが、この結合状態から生成されるスクイージング光の性質について、入射光強度などのパラメータ依存性を調べた。その結果、励起子ポラリトンよりも励起子分子が関与したスクイージング光の方がスクイージングの度合いが強いことを見出した。さらに、スクイージングの度合いが最大となる条件を明らかにした。
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