共振器中に量子ドットを埋め込んだ系による量子もつれ光子対の生成について理論的に解析した。以前、V型3準位-共振器系による量子もつれ光子対の生成を解析したが、本研究では右回り偏光と左回り偏光の励起子に加え、励起子分子も考慮した4準位-共振器系に拡張した。V型3準位-共振器系の量子もつれ光子対の生成では、共振器量子電磁力学に特有なドレスト状態(共振器中の光子と物質の励起状態の重ね合わせ状態)が本質的な役割を果たしていた。その結果、(1)入射光の偏光とそれらによる共鳴励起準位を選択することにより、4種類のベル状態の量子もつれ光子対が生成できる、(2)1励起ドレスト状態を利用して生成された量子もつれ光子対を振動数でフィルタリングすると、線形過程で散乱される不要な光子を遮断することができる、(3)フォトン・ブロッケード効果により、もつれ状態にない同種偏光光子対を強く抑制することができる、などの知見が得られた。 励起子分子を考慮した4準位系でも上記の効果は同様にあらわれるが、励起子分子の効果として新たに、(4)各種パラメータ(励起子と光子の相互作用、励起子分子と光子の相互作用、励起子分子の束縛エネルギー)の関係がある条件を満たすと、入射光の偏光を固定した場合に生成することのできなかったベル状態も生成できる、(5)光子対がほとんどもつれない条件が存在する、ことを明らかにした。以上の結果は簡略化したモデルで解析的に示すことができた。 各種パラメータは量子ドットの種類や大きさに依存することから、本研究は、量子もつれ光子源を設計するうえでの重要な指針も与えている。
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