シリコン試料のへき開断面を走査トンネル顕微(STM)観察するためには、まず平坦なへき開面を作製することが必要である。これは墓板上に薄膜界面を作製し、そのへき開断面を観祭する上においても重要である。平坦なへき開を得るために、Si(111)ウェハーの場合、最初にSi[1-10]方向に±0.5°以下の精度でケガキ線を入れることが必要となる。精度良くケガキ線をいれるための装置は市販にはなく、本年度は、まずその設計、作製を行った。これは既存のスクライバー(自動ケガキ装置)の上部に、He-Neレーザーとスクリーンを配置したもので、シリコンウェハーの一部をエッチングし結晶方位の情報を含んだエッチピットからのレーザー反射光が面方位に応じてスジ状になること(光像法)を利用して、面方位を精度良く決定し、けがくものである。 また、真空へき開が可能な試料ホルダーの設計、製作を行い、上記の試料を取り付け、真空へき開、低速電子回折(LEED)測定、STM観察を行った。局所的には、原子レベルで平坦なテラス(STM観察)や、へき開表面特有の(ほぼシングルドメインの)2×1表面再構成LEEDパターンが得られたものの、マクロスコピックには、いわゆるティアパターンが多く見られ、へき開方法に問題があることが分かった。その原因として、(へき開し易いが入手困難な)FZタイプのウェハーではなく、通常のCZタイプのウェハーを用いていること、へき開時の力の入れる方向や強度の問題が挙げられる。 表面、界面、基板のバンド湾曲の走査トンネル分光測定や、界面断面を上手くSTM観察するためには、へき開表面の水素終端(アニール)が有用と考えられる。水素導入時にSmCo磁石は水素を吸蔵し破壊されるので、磁石保護を施した耐水素用のトランスファーロッドの設置を行った。
|