研究課題
(1) 第一原理計算での使用を念頭において、スピントルクの一般的表式を導いた。スピン緩和の効果も考慮したスピントルクの微視的計算は、(本研究代表者らにより)簡単なモデルを用いて計算されていたが、それによると、重要な量はスピン緩和の詳細に敏感に依存することが分かっていた。そのため、現実の物質に対して定量的に評価するためには、第一原理計算のような手法と組み合わせる必要があったが、本研究により、この方向への第一歩を踏み出すことができた。なお、米国のグループによる同内容の報告があるが、彼らのは近似的な表式で、我々の厳密な表式とは異なる。(2) 磁化ダイナミクスにより発生する「スピン起電力」の計算において、ゲージ場を用いた計算法に存在していた困難を解決し、今年度の目標であった、空間的に局所的な表式を導くことができた。時間的・空間的に変動する磁化と相互作用する電子系を扱うのに便利な「ゲージ場の方法」を用いて、磁化ダイナミクスにより誘起される電流を計算すると、電子系にスピン緩和が存在する場合はゲージ場に関してゲージ不変でない(計算法に依存する)結果が得られるという困難があった。これは、ハミルトニアンに陽に現れるゲージ場だけを考慮したことによるものであることを一般論(Onsagerの相反定理)で明らかにし、それを踏まえて、スピン緩和項に現れる別の因子(回転行列)の効果をも考慮することにより、ゲージ不変な結果を得ることができた。このような効果は、以前、Gilbert dampingの計算において本研究代表者らにより認識されていたものである。
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