研究概要 |
今回は,あらたに価数転移を示すEuの化合物を作成しその輸送特性を中心に測定を行った.EuNi2Ge2は,GeのSi置換および圧力により高温の磁気モーメントをもつ2価の状態から,磁気モーメントがゼロの3価の状態に転移する.この価数転移近傍の組成および圧力下で詳細な輸送特性の測定を行った.あわせて,希土類ラーベス相化合物についても引き続き置換,圧力および磁場中での輸送特性の測定を行い,その物性を調べた. 1.EuNi2Ge2およびGeのSi置換系を作成し,熱電能Sおよび電気抵抗率の測定を行った.その結果,ある圧力で磁気転移点以下で価数転移が観測され,低温ではEuが3価の非磁性状態になることが分かった.これは,磁気秩序と価数転移が競合状態にあることを示している.また,EUNi2Ge2は鋭い価数転移を示し,低温でのSは特徴的な振る舞いをすることが分かった.また,置換系についても,Si置換により体積が小さくなる化学圧力により価数転移を示すことがわかった.しかしながら,置換系の価数転移におけるSの変化とEuNi2Geの圧力中の変化には大きな違いがあることが分かった.これは,価数転移は体積に大きく依存しているが,Si置換により電子状態が変化していることを示唆している. 2.軽希土類金属Ndの化合物,Y(1-x)Nd(x)Co(2)およびNd(1-x)Tb(x)Co(2)系を作成して,それぞれの化合物について電気抵抗率および熱電能の測定を行った.その結果,これらの系の低温における電子散乱はコバルト副格子の磁気的な状態に大きく依存していることが分かった.この電子散乱は,置換による分子磁場のランダムな空間分布とCo副格子のメタ磁性転移が大きく関与していることを明らかにした.
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