前年度の磁気異方性をもつ遍歴強磁性体の自発磁化が、臨界温度で1次転移的に不連続に消失することを明らかにした研究は、JPSJのレターとして掲載済である。この論文で明らかにした自発磁化の温度依存性は、最近のUCoGeの磁化測定の結果とほぼ定性的によい一致を示すように見える.異常な磁化率の温度変化を示す常磁性体FeSiと類似のFeSb2についての研究についで申請者の磁化曲線の理論による解釈の立場から協力し、研究結果を同様にJPSJのレターとして投稿し、公表した。これらのどちらについても、磁化曲線に対する申請者によるスピンゆらぎの効果が特に重要になる例である。投稿準備中であった、スピンゆらぎ理論についての「講義ノート」も、物性研究刊行会が発行する物性研究の記事(8月号)として公開した。 臨界点沂傍で発生するメタ磁性転移について、その起源についての理解は未だ確立しているとは言い難い。実験グループと協力して研究を行っているFe3Mo3N化合物もメタ磁性を起こす興味ある例である。この研究課題の目的に関係することから、スピンゆらぎ理論の立場から、10月に京都で開催された国際Workshopの招待講演において、メタ磁性転移の理論について発表した。その内容は論文としてJ. Phys. : Conf. Ser.に投稿し、すでに受理されている。 それ以外に、Ising的1軸異方性をもつ強磁性の場合の比熱の温度依存性を、秩序状態と常磁性状態に渡る広い温度領域で計算した。この結果も2011年春の物理学会で発表した。震災のため、実際には口頭による発表はないが、学会の用意したwebにアッブロードし、オンラインで公開される予定である。
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