本研究でとりあげる磁気誘電体RbCoBr3において、磁場中磁気誘電逐次相転移にする実験結を理論的に明らかすることが出来ました。この成果を直ちに実験研究者にフィードバックし、新たな実験計画・施設利用申請等に役立てています。では、以下に具体的成果について説明します。 まず、この物質を説明する理論模型の再構築を行いました。大枠としては、予備研究で提案したスピン格子模型と同じなのですが、新たに第2隣接相互作用に関して4面体格子歪みに起因する磁気相互作用変調をり入れました。これにより、比較的リーズナブルな歪みパラメータによって実験結果が説明できることがわかりました。また、数値シミュレーショーンアルゴリズムも改良を行い、平均場的近似のない計算が可能となりました。これにより、相転移の性質も精密に解析できるようになりました。 この新しい理論模型と計算アルゴリズムによって大規模数値計算を行いました。科研費によって導入した自作クラスターマシンの規模は、50ノード・200コア。これを個人で占有して使える環境は特筆すべきものです。これにより広範なパラメータスキャンも可能となりました。 ゼロ磁場における実験結果を再現する物理パラメータの推定を行い、これを用いて磁場中ツミュレーションを行いました。磁場温度相図、磁化過程の温度変化の実験との比較により、g値推定、磁気転移と誘電転移の同定、磁場中磁気秩序状態の解明、磁気誘電同時相転移の起こる磁場温度領域の予測を行いました。今後実験が行われる高磁場誘電測定の指針となる理論予測が出来たことは実験サポートとしては非常に意義があることです。磁場印加によって誘電転移温度を動かすことが出来ることも明らかにしました。誘電体の機能制御についての知見が得られました。また、μSR実験で観測された新たな磁気秩序相が1/2フェリ状態である可能性を指摘しました。 以上の通り初年度の研究課題は当初の研究実施計画の通り達成できました。
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