研究課題/領域番号 |
21540344
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
後藤 貴行 上智大学, 理工学部, 教授 (90215492)
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研究分担者 |
鈴木 栄男 独立行政法人理化学研究所, 岩崎先端中間子研究室, 協力研究員 (40327862)
中村 統太 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (50280871)
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キーワード | スピンギャップ / 量子スピン系 / NMR / μSR / 不純物誘起磁気転移 |
研究概要 |
乱れのないボース粒子系の基底状態はBose-Einstein凝縮相であるが、乱れを導入すると絶対零度において『ポースグラス相』が現れることがM. P. A. Fisherらによって理論予想されている。しかし、未だその実体は検証されていない。ボースグラス相は絶対零度で現れるため、実験室すなわち有限温度で直接観測するのは難しい。これまでの研究は、ボースグラス相とBEC相との相境界の変化に関するものが殆どであった。本申請の目的は、NMRとμSRというミクロプローブを用いて、乱れた量子スピン磁性体における絶対零度へ向かう臨界現象をダイレクトに捉え、ボースグラス相が実在するか検証を行う。二次相転移の臨界温度近傍では、熱力学的諸量に加え、ゆらぎ周波数が、還元温度(T-Tc)/Tcのべきとして振る舞う。このべき指数を捉えることが出来れば、相転移のユニバーサリティクラスを明らかに出来る。しかし、ボースグラスでは、臨界温度Tcがゼロであり、還元温度が定義できない。このため、臨界現象は必ずしも温度のべきにならず、どのような関数型となるかは全く不明で、動的スケーリング則すら成立するかどうか自明でないが、実験的に、この非自明な臨界現象を捉えることでボースグラスの存在を明らかにすることを目的とした。 本年度は、乱れを導入したTl(CuMg)Cl系等において、μSR、NMRの測定を行い、微量ドープ域では、熱力学的秩序状態でありながら、コヒーレントなスピン揺らぎが存在するのに対し、臨界濃度を超えると、スタティックな内場が現れることを明らかにした。
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