研究概要 |
本課題は量子効果を示す低次元スピン系の中で、特にスピンパイエルス転移を示す系における磁気励起を明らかにすることを目的としている。対象とする系はTiOBrおよびハロゲン架橋型ニッケル錯体[Ni(chxn)2Br]Br2(chxn=1R,2R-cyclohexanediamine)である。共に、スピンパイエルス転移を示すと期待されている系にもかかわらず、スピンギャップの直接観測は未だなされておらず、本研究で高エネルギーパルス中性子を用いた動的相関の測定を行うことにより、スピンギャップならびにブリルアンゾーン全域に亘る広い運動量-エネルギー空間でスピン揺動を捉える。 候補物質のひとつであるTiOBrに関して非弾性散乱測定を行った。以前、ロスアラモス研究所での測定では、磁気ピークと考えられるシグナルは反強磁性のゾーン中心、エネルギーが20meV程度の領域で観測された。その領域が含まれる運動量空間での測定を再度行ったところ、明確なシグナルが観測されない。現在、整備された解析環境下で、より詳細な運動量依存性とエネルギー依存性を解析中である。 一方、J-PARCに建設中であったチョッパー分光器がほぼ完成し、今年度からの実験研究が可能になった。これからJ-PARCでの測定を行い、ロスアラモス、ISISおよびJ-PARCでの測定結果を比較することで磁気励起状態を議論する。
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