研究概要 |
本申請の最終ゴールは、反転対称性の欠如した重い電子系圧力誘起超伝導体CeTX_3(T:Rh,Ir,Co、X:Si,Ge)の磁場中圧力下における熱容量の測定を行い、電子状態に関する知見を得る事である。特に、CeIrSi_3とCeRhSi_3では、反強磁性と超伝導が共存する圧力領域と超伝導のみが観測される領域では、熱容量の振る舞いが全く異なることに注目している。すなわち、前者では、ギャップレスとも言うべき超伝導状態が実現されているのに対して、後者ではΔC/γT_cがBCS理論の数倍にも達する強結合的な超伝導状態が実現している。これら特徴的な圧力領域で磁場中熱容量の測定を行い、反強磁性と超伝導の相関について実験的に知見を得る。熱容量の測定では、物質のバルク特性について知見を得る事はもちろんの事、超伝導状態においても有限な物理量として測定出来るため、超伝導のみが観測されている圧力領域においても、隠された反強磁性が磁場で誘起される現象なども観測される可能性があり、電子状態に関して決定的な実験となり得る。電気抵抗(ゼロ抵抗)や磁化率(マイスナー効果)の測定ではなし得ない磁場中での電子状態を本研究では観測することを目的とする。21年度は、高圧力・磁場中での交流比熱測定を行う^3Heクライオスタットを本科学研究費補助金で購入し、比熱測定を完壁に行えるようクライオスタットおよび測定部の最適化を行った。すなわち、磁場中で、交流比熱測定に耐え得る断熱状態を保ったまま、単結晶の結晶軸がずれない測定部の治具を作製した。また、この測定部を用いて、2GPaの量子臨界点付近までの測定を行い、極めて良好な測定が可能であることを確認した。到達最低温度も、熱容量の大きな圧力セルを冷却したにもかかわらず、0.4Kまで冷却可能であることが分かった。
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