研究課題
本年度は、科学研究費補助金の最終年であった。大いに成果があがった。すなわち、研究課題である「空間反転対称性の欠如した重い電子系超伝導体の高圧磁場中の比熱測定」を遂行し、極めて重要な知見を得た。実験は、CeRhSi_3に関して行った。(1)反強磁性と超伝導が共存する圧力領域、(2)反強磁性が消失した直下での圧力領域、(3)反強磁性が十分に消失し極めて強いクーパー結合が出現する圧力領域の3つの圧力下に、磁場を印加し、比熱の測定を行った。(1)の状態では、磁場の印加とともに超伝導転移点は下降した。ただし、空間反転が欠如しているため上部臨界磁場は極めて高いことがバルク特性として観測された。また、反強磁性点移転は、圧力に対して、リエントラントな振る舞いをすることが分かった。(2)の状態では、無磁場中では、シャープな超伝導転移のみが観測されていたものが、磁場の印加とともに、ブロードな転移になることが分かった。ただし、単純にブロードになるのではなくて、二つ以上の相転移の重ね合わせとして、構造を持つように見える。(3)の状態では、無磁場中で極めて大きな結合力を示唆する超伝導転移が観測されていたが、磁場の印加とともに、転移の大きさが小さくなるように見える。ただし、(2)で観測されたような、構造は観測されず、転移点も最大印加磁場7万ガウスでは、ほとんど変化しないという結果を得た。すなわち、磁場の印加は、圧力の印加と真逆の効果を得ることが示唆されるような振る舞いをした。これは、極めて重要な実験結果である。この系が、単純な反強磁性と超伝導の共存という構図で考えることが出来ないこと、つまり、反強磁性および超伝導の揺らぎが極めて重要であることを実験的に明らかにしたことになる。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (13件) 図書 (1件)
Phys.Rev.B
巻: 84 ページ: 024502-024508
