結晶場基底状態に軌道自由度を持つ希土類化合物RTX_5に出現する、4f電子の磁気モーメントの部分成分磁気秩序について、その起源を明らかにするとともに、四極子モーメントと磁気モーメントの間の相互作用の競合による新しいフラストレーションの形態を明らかにすることを目的としている。本年度は超音波による弾性定数測定、共鳴X線散乱を行なった。部分成分磁気秩序は、一軸異方性を持つ化合物において磁気モーメントのc軸成分とab面内成分が別々の独立な温度で秩序化し、その相転移はともに2次相転移である。このような逐次相転移が起こるのは磁性元素中の局在電子が結晶場基底状態において軌道(四極子)自由度を持ち、軌道自由度と結合しない磁気モーメントの方向成分がまず秩序化し、より低温では残りの成分が軌道自由度の消失とともに秩序化することによって起こることを明らかにした。さらに、四極子間に相互作用が働き、それが磁気モーメント間の相互作用によって形成される磁気構造と競合する場合には磁気転移温度を著しく低下させること、四極子間相互作用が強い場合にはまず四極子(軌道)秩序が起こり、その後低温で四極子と結合しない方向の磁気モーメントが秩序化すること(例:DyB_2C_2)を示した。一方、NdB_4においては常磁性状態で磁気モーメントの小さな方向の成分が高温側で先に秩序化するという今までに例のない部分成分磁気秩序を発見した。今後この化合物において多極子とその相互作用の競合について明らかにする。
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