研究概要 |
立方晶の結晶対称性を持つプラセオジム化合物で見られる重い電子的異常を探ることが本研究の第1の目的である。その発展としてプラセオジムだけでなく整数量子数をもつホロニウム化合物を取り上げることが2年度以降の研究計画である。昨年度からホロニウム化合物の試料作製を開始し実験研究をスタートさせた。 新たにスタートさせた非クラマース元素を含む立方晶H_O化合物は、HoSb,HoFe_2Zn_<20>,HoRu_2Zn_<20>等である。これらの単結晶試料の詳細な実験により、昨年度からデータが集積され始めた。更に、これらの参照物質として、Ho原子の隣に位置するDy化合物、DySb,DyFe_2Zn_<20>,DyRu_2Zn_<20>等の単結晶試料、また、Yfe_2Zn_<20>Yru_2Zn_<20>LaRu_2Zn_<20>等の単結晶試料の育成を行い、いずれも成功した。 HoSbの詳細な磁場中比熱、磁化、熱膨張、磁歪の実験から、HoSbは非クラマース2重項を基底状態にもち、磁気秩序と4極子秩序が複雑に絡みあった詳細な相図をもつことを明らかにした。HoRu_2Zn_<20>の単結晶に関しては、Hoは立方対称性の位置にあり、磁性原子が希薄にもかかわらず強い磁気異方性があること、この強い異方性は結晶場ハミルトニアンで解析できることを明らかにした。RuをFeで置換した化合物H。Fe_2Zn_<20>に関しては、HoRu_2Zn_<20>と比較して磁性転移温度が大きく上昇した。Ho間の交換相互作用の増大の原因を探るため、YFe_2Zn_<20>の詳細な実験を行い、YFe_2Zn_<20>の中のFeの磁性が、所謂、nearly ferromagnetismであること、HoFe_2Zn_<20>の中でFeが磁気転移温度を増強させていることを明確にした。遍歴電子である3d電子が局在性の強い4f電子の交換相互作用を増強させていることを理論的にも明確にできたことは重要である。
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