研究課題/領域番号 |
21540360
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
池田 隆介 京都大学, 理学研究科, 准教授 (60221751)
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キーワード | 超伝導 / 反強磁性 / パウリ常磁性 / 渦糸 / FFLO相 / 空間反転対称性のない超伝導 / 重い電子系 |
研究概要 |
本課題における23年度の研究目的の一つは、平行磁場下のCeCoIn5の高磁場・低温超伝導(HFLT)相においてのみ実験的に見出された反強磁性秩序と、この相をFFLO超伝導とする解釈の整合性を理論的に明らかにすることであった。我々が得た研究成果は、大別して、以下の2つにまとめることができる。まず、実験的に報告されたHFLT相における反強磁性秩序の構造をCeCoIn5の既存のフェルミ面に関する知見を基に詳細に調査し、実験的に見出された、ほとんど磁場値に依らないQ-ベクトルの正体を明らかにした。また、この物質の高磁場下で実現した渦構造の異常な磁場依存性が、当研究グループが先駆的に見出したパウリ常磁性により超伝導体内で誘起される反強磁性揺らぎにその起源があることを、渦構造における磁束密度分布を計算して明らかにした。これらの研究成果はそれぞれ、フィジカルレヴューB誌に23年度中に掲載論文として報告された。 また、空間反転対称性のない超伝導体における渦構造の過去の研究と理論的に関連する問題として、ギャップノードを持つd波超伝導体の薄膜において実現が期待されるFFLO相とその磁場に対する安定性を詳しく調べた。このFFLO相と高磁場で実現が期待される従来型のFFLO相との競合により、ゼロ磁場下で超伝導相がない薄膜においても磁場下では超伝導がむしろ誘起されるという、磁場誘起超伝導の一例が見出されることを突き止めた。この成果に関する論文は現在執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験的に見出されていた反強磁性の微視的特徴の起源が、フェルミ面の構造でおおむね決まることを納得のいく精度でしめすことができ、この成果には同じ題材の解明を目指す他の海外のグループは達することができていないから。
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今後の研究の推進方策 |
重い電子系超伝導体CeCoIn5を対象としたパウリ常磁性の強い超伝導体の高磁場領域で起こる反強磁性との共存のメカニズムはこれまで、弱結合近似のモデル内の解析に限られており、反強磁性揺らぎによる相図の変更など、様々な効果を手で取り入れている、いわば半現象論的な取り扱いが中心であった。この問題は、磁性と超伝導の競合、共存の問題に関する新たな方向となる重要な題材であるため、平成24年度では強相関系のモデルハミルトニアンから直接出発するアプローチから解析を行い、弱結合モデルでの結果の正当化を行う。
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