平成24年度には、次の2つの課題に着いて研究を進めた: (a) 重い電子系超伝導体 CeCoIn5 の高磁場下に現れる FFLO 超伝導と反強磁性の共存相の強結合理論による理論的記述 (b) d 波対超伝導体の薄膜で発現が期待される磁場誘起超伝導相図の理論的研究 以下では、(a) に絞って成果の概要を説明する。 当グループでこれまで行われてきた弱結合理論をさらに堅固なものにする目的で、まず (1) FLEX 近似という強相関性を考慮に入れたモデルに立脚し、これまでの弱結合理論の結果の拡張を試みている。 さらに、 (2) 実験的に FFLO 秩序と反強磁性秩序の分離が見られた、磁場方向を結晶軸から傾けた状況下への理論の拡張、に取り組んだ。(1)では、ハバード模型に対して FLEX 近似を用いて、反強磁性スピン揺らぎを自己無撞着に取り込んで d 波超伝導を生成する機構やパウリ常磁性が効いて初めて誘起される反強磁性秩序化を統一的に記述する理論の構築を目指している。弱結合近似の結果に比べ、高磁場での反強磁性秩序化が強まるなど、期待通りの結果が得られた。近日中に論文にまとめる予定である。(2)では、反強磁性が FFLO に比べてわずかな傾き角で消失するという実験事実に符合する傾向を得た。特に興味深いのが、傾けていくとともに反強磁性が Hc2(0) より低磁場側で消失して量子臨界点に変貌するという、実験データと従来の理論のみからでは説明困難であった実験事実を説明できたことは、当グループの提案した理論の正当性を支持する重要な成果である。量子臨界点が Hc2(0) より低磁場側に起きる理由は、反強磁性を超伝導相の高磁場側に作りたがるパウリ常磁性効果と磁場によりネスティング条件が弱められる効果とが競合することによる。この論文を平成25年4月現在執筆中である。
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