研究課題
フタロシアニン分子から構成される伝導体は、電気伝導を担うパイ電子系、局在スピン源となるd電子系と相関効果が期待される物質系である。実際、磁場の印加によって電気抵抗が減少する、巨大磁気抵抗効果が観測されている。このメカニズムを解明する上で、本物質系の基底状態を明らかにする事は重要である。これまでの測定で、ブラッグ反射の中間位置に新たな散漫散乱がある事を見い出している。低温で電荷不均一状態(弱い電荷秩序)になっている事を示しており、パイ電子系における近接クーロン相互作用によって絶縁化している事が分かった。次の段階として、電荷不均一状態とスピン状態との関係を調べる事が必要である。そこで磁場下のスピン状態を精査するため、強磁場下で磁化測定を行った。その結果、13テスラ付近において磁化曲線に折れ曲がり構造を見いだした。さらに、.55テスラ程度の磁場で磁化が1サイト当たり1ボーア磁子程度の値で飽和する事も分かった。これらより、局在スピンは低温で反強磁性的な短距離相関を有していたが、13テスラ付近でスピンがフリップを起している事を示唆される。また、強磁場下での誘電率測定においても13テスラ付近で異常が観測されており、局在スピン系の変化がパイ電子系の電荷状態に影響を与えている事が分かる。そこで22年度は、上記の磁性変化と電荷不均一性との、より直接的な関係を調べるために、X線散漫散乱強度の温度依存性および磁場依存性を精査していく予定である。
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